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ジュウイチ その2 - Rufous Hawk-Cuckoo #2 - Hierococcyx hyperythrus

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僕にとってジュウイチはいつまでも謎の鳥だ。はじめて見て度肝を抜かれた、京都北山の八丁池での絶叫の印象があまり強くて、「滅多にいない」「気が違ったように鳴き叫ぶ」「西日本の鳥」というふうに考えてきた。

なにせあの時は、やぶ越しとは言え、僕の頭上の木に止まって、びっくりするくらいの大きな口を開け、大きな目玉も見開き、またびっくりするくらいの大きな声で、「じゅういちー、じゅういちー、じゅういちー(以下略。だんだん速くなる)」「ばかやろー(嘘)」と叫び狂っていたのだ。最高の初対面。聞けば夜も啼くというし、なんかすごい奴だなあ、と思ってきた。

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(参考出品、バカヤロージュウイチ 2007/06 @ 京都)

東日本では見たことも聞いたこともなかったが、それが長野の端っこにもいることが分かったのは、数年前の九月。小屋の近くの林道に下りて、何やらごそごそやっている姿をみとめてびっくりしたのだった。さらに驚いたことに、次の年もその次の年も九月になると現れて、林道の同じ場所で同じように地面に降りている。毎年一度は見るが、二度見ることはない。やっぱり変な奴なのだ。

しかし、あの10キロ先からでも聞こえそうな(誇張)大声が聞こえないのはおかしい、九月は渡りの途中に寄っているか、あるいは山の高いところから下りてきたのかもしれない、などと考えていたが、今度は一昨年の春、用事で下の集落に下りていた理事が、集落の更に下の小さな林にジュウイチがいた。というのだ。あんなとこに?本当にジュウイチか?と聞くと、一見タカ風、南米のトロゴンみたいな顔をして、頭の後ろに十円ハゲがあったから間違いないと言う。確かに間違いない。えー?春もいるのか。

その年の九月、待ちかまえていると(笑)、やはり林道の同じ場所に出たのでしばらく観察していたら、どうも林道に出てくるバッタを掴まえようとしているらしい。バッタが飛ぶとバサバサ、と上から押さえつけるように着地し、またキョロキョロとバッタを追いかける。あまり精悍な様子ではない。

今年の五月。林の中とは言え、すこし下がったところ、山と野の境、耕地とのへりに近いところを歩いていたら、とうとう鳴き声を聞いたのだった。ただ、あの、素晴らしくエキセントリックな、狂った「じゅういちー(ばかやろー)」ではなくて、ずいぶん上品な「じゅいち、じゅいち」。理事と、あの、ずっと優しげにリズミカルに啼いているあの鳥は何だ?としばらく考え、考え、「あ、ジュウイチ」と気付いたのだった。

そして先日。今度は小屋の近くで、とうとう初めて、山の鳥らしい姿(笑)と対面することが出来た。若い鳥のようだ。それが今回の写真。

しかし、やっぱり、八月にもこの辺にいるんだな。大人しく暮らしているだけなのか。いや、それなら小屋の前でパンクに叫んでくれてもいいんだけど。五月の観察記録や鳴き声の方角から察するに、もう少し標高の下の方にいるのか。いや、托卵先のオオルリコルリは下の方にはいないではないか。などと、謎が謎を呼ぶジュウイチの生態探索は、まだ途上である。

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8/30 追記。
その後のジュウイチだが、小屋の辺が気に入ったらしく、すっかり居着いている。だいたい小屋の上下に伸びる林道で虫を見ている(推定)が、気が向くと小屋の前、というか目の前のケヤキの枯れ枝までやって来るし、先日は散歩をしている僕をわざわざ追ってきて、薮の向こうからこちらを見ていた。あまり気にしていない、というより僕らに興味が湧いてきたのかも知れない。そんな風情だ。ハットリ君みたいな顔をしていて何を考えているかはわからないが(笑)。というわけで親睦のしるしに四枚追加。

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カッコウらしいあごひげと、タカっぽい尾羽がすてき。



[写真撮影:2020/08 - 長野県 - 体長約35cm - 個人的博物館本館のカッコウのなかまのページへ]
[photo data : 08/2020 - Nagano, Japan - about 35cm - visit "
Cuckoos and Allies" (main museum site)]
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