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セイタカシギ - Black-winged Stilt - Himantopus himantopus

皆が言うことだが、澎湖は本当に風が強い。夏の短い間だけは暑くて、天気も良くて、素晴らしいという話なのだが、僕が行った十一月はもちろん寒くて、雨も降って、風もびょうびょうと吹きすさぶ、夢の去った不機嫌な澎湖だった。


スクーターをバリバリと飛ばして、西嶼の端っこまで行く。行くと言っても、橋の上ではスクーターが前に進まないほどの風だ。あまりひどい時は風が小やみになるのを壁の下で待って、タイミングを見て一気に進む。進めば雨具が耳を麻痺させるほどの音を立て、顔は鼻水でぐちゃぐちゃ。時々村に入ると一息つくが、人も少なくて、遠景では波が白く砕けている。なかなかにすさまじい。

ようやく近づいた突端の岬も吹きさらしで、とにかくコケないように、前方に集中して一生懸命走っていると、視界の右側にびゅっと小さな池が通り過ぎていった。そして、通り過ぎる瞬間、何か水鳥がいたような気がした。感覚に自信が持てないし、こんな荒れ地の水たまりに何かいるわけがない、という思いも強いが、後悔するのも嫌なので、バイクを止めて、そろそろと引き返す。

すると、確かに何か変なのが居たのだ。こちらを見て嫌な顔をするが、疲労しているらしくてあまり動かない。悪戯坊主のような、どこかで見たことのあるような顔だが、初めてのような気もする。何だろうこれは、と考えることしばし。セイタカシギだとやっと気付いた。思ったよりずっと水が深いのだ。あの長い脚を、ほとんど水の中に沈めて、風を避けているのだ。

鳥にしてみれば恐らく深刻な事態だが、人ごとだけに分かってみればちょっと可笑しくもある。おい大変だな、と声をかけると、うるさい、とっとと行けというので、鼻水を拭き拭き先を急ぐことにした。





[写真撮影:2007/11 - 澎湖・西嶼 - 約40cm - 個人的博物館本館の
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[photo data : 11/2007 - Siyu Island, Penghu, Taiwan - abt 40cm - visit the main museum ('
Plovers, Oystercatchers, Lapwings...")]
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