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[這いずり日記] シオシオのパー。水の巻その四~長野方面2019/11

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引き続き去年の11月の続き。もう写真の整理も終わったので、あとは並べて出すだけ。


というわけで前回からの続き。連載第二回というか第四回と言うか。

ここまでの話
水の巻、その1
水の巻、その2
水の巻、その3


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ただ、飲もうが飲むまいが、「吠える」中心で、センサーに不具合がある前のめりの攻撃的な人格は、世間一般では面倒くさい奴として扱われるので、友達が結婚したりして小賢しい分別を備えてくると、O は敬遠されることが少しずつ多くなった。まぁ、若い時から飲み会の度に友達をなくすと言われていた奴だから驚くには当たらないが、不幸なことに、一皮剝いた O の実際は淋しがり屋の憶病者であったから、これはかなり堪えていた。

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四つ足に喩えるのは本意ではなく、他意もないのだが、他によいものが思い浮かばないので語弊は承知で言ってしまうと、若い頃の O は楽しくて楽しくて、みんなと遊んでいるつもりで、人の手をカプカプ噛んだり、吠えかかったりする犬のようなものではなかったか(ちょうどゲン、つまり O の実家の犬がそんな感じだったが(笑))。そして気がつくとみんな段々と遊んでくれなくなって、その理由もわからなくて、公園で途方に暮れたのではないか。

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O にとっての大きな誤算にして、人生の最大の転機は、しばらくして双極性障害を発症したことになる。ここではいくつかの幸運と不運があった。状況を察知するだけの知識と家族を説得して病院に放り込むだけの実行力を兼ね備えた友人が近くにあり、遅滞なく診療が受けられたこと。そして処方された気分安定薬がうまく合った上に、職場に理解があり、大きな問題なく社会復帰に至ったことが幸運。ただその気分安定薬の作用が、前のめり、「やや躁」の O のスタンスを、「やや鬱」に後方修正してしまったのが、致し方ないとはいえ、不運、というか不幸としてその後の生活に影を落とすことになった。

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だから、入院中の精神科の病院では他の入院患者の人生相談を引き受けて絶好調だった O も、退院して「気分が安定」してしまった後は、離婚したこともあり、生来の破調が影を潜めて、寂しそうに、詰まらなそうにしていることが多くなった。攻撃陣を引き抜かれてしまった攻撃サッカーのチームが、不本意ながら自陣に引きこもっているとでも言うか。見かねた理事に家に呼び出されて、小麦粉でも捏ねて体を動かしなさい、などと命ぜられ、憮然としながら餃子の皮を捏ねていたのもこの頃の話だ。

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とは言えそんな暗い話ばかりでもない。まぁ元気を出せ、と言う趣旨で何回か僕の自然観察にも付き合わせた。泊まりがけの温泉旅行で、不審人物として二人でパトカーに追跡されたり、震災前の東北でツルやシギや妙な建築物を見て廻ったり。今はなき松之山の兎口温泉・植木屋(とても渋い)に何日か連泊して、そろそろ帰るかと準備をしていたらまだ物足りないとか言いだすので、しょうがないなあとそのまま法師温泉にハシゴしたのもこの頃の話だ。他にも色々つきあってもらった。もうラッパ飲みはしないし、吠えもしなくなったが、幌を開けた僕の MG の助手席から相変わらずヌケヌケと指図をする姿は O らしかった。

(続く)

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水の巻、その1
水の巻、その2
水の巻、その3
水の巻、その4 <- いまここ
水の巻、その5
地の巻、その1
空の巻、その1


[写真撮影 : 2019/11 - 長野県] [photo data : 11/2019 - Nagano]


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