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[更新情報] スリナムの鳥 その9 (アラパウその2、パート2/3)

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前回、探していると書いた文章が見つかった。日本に帰って比較的すぐに認めた書きかけの文章で、前回と重複する部分もあるが、今となっては忘れていたことも多いし、直すのも面倒なので、そのまま掲載する。

その前に、忘れないうちに更新記録も書いて置こう。

Bicolored Hawk, Black-and-white Hawk-Eagle, Osprey, White Hawk, Plumbeous Kite, Black-throated Mango, Fork-tailed Woodnymph, Green-bellied Hummingbird, White-chinned Sapphire, Black Numbird, Swallow-winged Puffbird, Guianan Puffbird, Green-and-Rufous Kingfisher, Amazon Kingfisher, Green Kingfisher, Grey Antwren

和名は

モモアカハイタカ, セグロクマタカ, ミサゴ, シロノスリ, ムシクイトビ, ムナグロマンゴーハチドリ, エンビモリハチドリ, スミレオエメラルドハチドリ, シロアゴサファイアハチドリ, クロアマドリ, ツバメオオガシラ, シロエリオオガシラ, アカハラミドリヤマセミ, オオミドリヤマセミ, ミドリヤマセミ, ハイバラヒメアリサザイ.




疲れた、というか傷んだ体を二日間の
パラマリボ・ホテル生活で癒し、さて問題のアラパウである。

本格的な調査とかならいざ知らず、スリナムの内陸で滞在できる場所などそうたくさんはないのだ。フォルツベルクとか前回滞在したところは避けたいし、やはり鳥仙人が知っているところがよいだろうし、、と考えると、候補地は二、三ヶ所しかない。
フレッドベルクとか前半はややストイックな旅程だったし、後半は理事も少し休めるような、風光明媚な場所がよかろう、それに川沿いであればカヌーでの観察が主力になって、くたびれていても歩く必要はないし、という判断で、アラパウに決めた。

アラパウはガイアナ国境に近く、パラマリボから 400km くらい南西に向かった、コランティン川沿いにある、まぁ、リゾートである。すぐ近くにはスリナム最大級の大きな滝、というか日本的な感覚では巨大な瀬があって、ネットで多少は見つかる写真を見ると、確かに風光明媚。鳥仙人の話では、運が良ければカワウソも見られるよと言うし、これなら理事も喜ぶであろう。もちろん道なんかはないから、行く場合は近くの飛行場、というか森を切り開いた滑走路まで、セスナをチャーターして飛んでいくのである。滑走路に降り立つと、リゾートの者が ATV で待っていて、荷物とともにコランティン川まで。そこからは船外機つきのカヌーでリゾートまで30分、聞いただけでウキウキするような素晴らしさ。どうせ宿も飛行機も貸し切りなんだから値段も変わらないし、ということで、鳥仙人の古い友達、インド系美人のナヴィータも同行することになった。

早起きして、パラマリボの国内空港に到着すると、時間ギリギリなのに待たされる。どうしたのかと聞くと、スタッフは社長が来るから待てという。聞くと、今回チャーターする航空会社の社長がアラパウのリゾートのオーナーで、鳥仙人とも旧知の間柄だそうだ。ずいぶん待たせてやって来たオーナーは白人の太った男で、笑顔はこぼれんばかり。そうかい、カメラはペンタックスかい、そりゃいい、僕の親父はミスターペンタックスなんだぜ、とか、不要な愛想をふりまく。ひたすら胡散臭い。飛行機に乗り込んでも一体あいつは何だったんだ?と疑問が渦巻くが、それはやがて思い知ることになる。

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↑着陸間近。人跡未踏である。

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↑これはまだ高度を下げる手前。人跡未踏である。スリナムには、世界最大の未開発の熱帯雨林パッチがあると言われている。

えーと、それで、さて問題のアラパウである(笑)。1時間45分のフライトは素晴らしかったが、着陸したら誰もいない。理事と僕、鳥仙人とナヴィータ、各自の荷物、それと五日分の食料を灼熱の無人滑走路に放り出して、飛行機は帰っていった。飛行機が遅れたから迎えが一旦帰ったんじゃないかな、あるいは船外機が故障したかな、いずれにしてもリゾートと本社は無線でやり取りしているから、すぐ来るさ、という鳥仙人の言葉を信じて、一行は空港ビルディングの待合室で待つ。五日分の食料のなかに弁当を見つけて食べ、さらに待つ。でも、二時間待っても三時間待っても誰も来ない。これは明らかに何かおかしい。

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↑これがアモトポ空港の空港ビルディングと唯一の標識である。

子どもの時に内陸で暮らしたことがあるというナヴィータは既に諦めモードで、ここに食糧はあるから、近くのインディオの部落で鍋を借りられたら、火を熾して晩ご飯は私が料理する、という。でも一晩明かすなら
ヘビとかも(ムカデも)いるし危ないぜ、そりゃそうだ、そもそも定期便があるわけでなし、明日になっても状況は改善しないんじゃないの。そりゃそうだ、だいたい無線連絡って、一日のうち一回か二回、時間決めてやるんじゃないのか、そりゃそうだ。とにかくインディオが船外機持っているかわからないが、部落で頼み込んで日が暮れる前にアラパウまで運んでもらうしかないんじゃないか、そりゃそうだ。

などと議論の末、鳥仙人が単身、近くのインディオ部落に出向いて、なんとか話をつけてきた。うまい具合に船外機つきのカヌーもある。ただし、男衆が出払っているから、操舵は不慣れなお母さんで、五時までに途中の瀬を抜けないともう渡れなくなるから急げと言う。是も非もない。一同は大きな荷物を空港ビルディングに置いて、川まで急いだ。

コランティン川はでかい。何せ河口では岸の間が 8km もあるという大河だから、これだけ上流でも、流れが強くて向こう岸が遠い。頼りない木製のカヌーにはビルジキールのようにロールを抑制するものがないから、乗員が傾くと、遠慮なく、くるりくるりとバランスが崩れる。しかも、どういうことか、何だか分からないが、僕ら四人、そしてお母さんが座った間に、赤ん坊を抱いた娘(お母さん似でちょっと可愛い)、男の子二名が隙間なく乗り込んでくる。まぁインディオの家族は皆ニコニコしているから大丈夫だとは思うものの、定員オーバーみたいな気もするし、すぐ手の下は水面だし、内心、おいおい本当に大丈夫かよ、とおっかなびっくりである。

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それでも川に滑り出すと、木々は青くて、水は滑らかで、何より風が爽やかで気持ちよい。目を落とすとカヌーに水が沁みてきているし、ナーバスになった理事が後ろで「今転覆したら全力で左に泳ぐのよ」「今は右よ」とうるさいが、、見上げれば空が青くて、雲が白い。なんだか、もうどうでも良くなってくる。どうせ死ぬならこんな死に方もいいなあ、スリナムの奥地でカヌーが転覆、日本人観光客ら死亡。宿から迎え来ず、とか報道されて、物好きな奴らがいるもんだとか笑われるのかなあ、とか考えるとなんだか嬉しい。見ると、川に落ちて死んだと思しいナマケモノの土左衛門が、さぁっと横を流れていく。ナマケモノと一緒か、これはますます嬉しい。

流れる雲を見上げながら一人うふふと微笑んでいると、川音が変わったことに気付いた。先頭に乗っているインディオの少年二名が、お母さんに右、左、と細かな操舵指示を出し始める。目を落とすと、川幅一面の瀬である。ははあこれが問題の瀬だな、とわかる。理事に注意を促し、船べりをがっしりと掴んで、身をかがめ、右、左、右、船の動きに身を合わせて傾ける。途中までは良かったのだが、お母さんが何やら叫んだと同時に、ガツンとカヌーは止まった。ガリガリガリ、川の真ん中で座礁である。船はちょっと傾いて、前後からあがる悲鳴。少年二名が、間髪を入れず川に飛び込む。流れは急だが案外浅い。押しても引いても埒が明かず、今度はお母さんも飛び込んだ。声だけ聞くとお母さんの指令の声は悲痛にも聞こえるが、子供たちは終始ニコニコしているのがアンバランスで可笑しい。でも、少年は遊びで乗り込んだわけではないとやっと分かった。

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↑臨場感を盛り上げるために急流の写真を掲載したが、これは本流ではなくて支流。ただ、どこもかしこも水量がやたら多いのは確かだ。

家族の奮闘の甲斐あって船はやがて瀬を脱出し、沈没することなくアラパウに到着した。30分どころか二時間くらいかかったけれど、揺れる飛行機とかであれば動揺を隠せない僕だが、インディオの家族のせいか、流れていったナマケモノのせいか、終始全然緊張しなかった。ただ、理事の心には深いダメージを負わせたようで、それは後半に続く。

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↑懐かしのアラパウ。かつてのリゾートは、失敗して忘れ去られた廃虚となっていた。

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↑アラパウの共同浴場。半分廃虚となったアラパウの給水排水設備は使用不能なので、ここで体を洗う。無論、洗濯や乳児のトイレなど、いろいろに使われる。木のところまで浅瀬の砂浜だが、それより先は、エイだのピラニアだの、ややこしいのが色々いて危ないから立ち入り禁止。と言われた。木のところに腰を下ろしていると、アジサシとかがひゅーん、と飛んできていい感じだ。写真左側はインディオの若奥さんマコとその乳児。右はカヌーを操縦してきた奥さんの旦那さん、ネピ。

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↑ここのインディオの連中は、川の民。日がな釣りをしている。まず虫を捕まえて、それで小さな魚を捕まえて、それで大物を狙う。
たいていはナマズの類だが、それぞれにでかい。下のナマズっぽいのは、Redtail Catfish =
Phractocephalus hemioliopterus 、左奥のは Tiger Shovelnose Catfish = Pseudoplatystoma fasciatum と思われる。
僕以外の皆さんは唐揚げみたいにして食べておられた。くせがなくてうまかったそうだ。

[写真撮影 : 2017/08 - スリナム・アラパウ] [photo data : 08/2017 - Arapahu, Suriname]





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