[這いずり日記] 鹿塩 2017/夏
06/28/17 05:38 category :travelog
西の方で打ち合わせがあり、いつものように自然観察と抱き合わせることを検討した。芦生とか八丁平が頭に浮かんだが、他の仕事もあってそこまでの時間は割けない。ならばということで、帰り道、鹿塩に寄り道することにした。久しぶりの他流試合だ。ちょっとうれしい。
鹿塩といえば、三伏峠の登山口だし、温泉もあるから、まぁそのうち行くことになるだろうと定めてからもはやうん十年(笑)。我ながら塩見にも一向に登る気配がないので、この機会にと言うわけだ。昨今は大鹿村も映画にもなったり知名度が上がってきているようだが、言ってみれば中央構造線上に位置する絵に描いたような山間の、過疎の、僻地である。但し、ただの僻地と軽視できないのは、産業史・文化史上に存在感を発揮する村だからだ。
ただ行ってみると、予想以上にあり様がよくなかった。松川から車で上がっていくと、次から次から、大きな工事車両に出迎えられる。もうあちこちでそんなことになっているからもはや驚きもないが、川は川と言うより工事現場という名の無法地帯になっていて、痛ましいから右側は見ないように運転する。治水は治水で了解するが、やり過ぎと言うことはないのか。ましてやリニアとかなんだあれは。
鹿塩まで着くと、谷がV字で深いから、多くの集落が谷から少し上がった台地に形成されていて、由緒正しい神社もその位置にある。スケールは違うが、秋葉街道でもだいぶ南の方の天竜川沿いとちょっと似ている。向かいの集落、次の集落という具合に同じ視線の先に捉えられるけれど、行こうとすると深い谷を越えていかねばならない。
鳥倉山の方、二児山の方、それぞれ一日ずつ割り振ってうろついたが、残念なことに山はほとんど見渡す限り杉の植林で、その景観には少なからず落胆した。まぁ、時間がないことを言い訳に、車に乗って、林道を使ってお手軽な探検をしているのだから、林道の周辺で伐採が済んでいたとしてもある意味当然なのであるが、それにしても、背後も、右も、左も、向かいも、奥も、見渡す限りの均一な林とは。林道脇も侵入植物がニョキニョキ生えて、林床は羊歯ばかり、気分はジュラシックパークだ。
そんなこんなで自然観察は低調に終始した。奥山では、鷹が二羽出たほかは、ハシブトガラスとホオジロ (!)がやたら多い。丹念に見ると、ビンズイがディスプレイしていたり、ルリビタキが避暑に上がってきていたりしたが、まぁあとはカケスと、カラ類と、そんなもの。ほ乳類も鹿一頭と、あとは捕虫網をふりまわすおっさんが一頭くらい。むしろ里山環境に近い集落周辺の方が環境は落ち着いていた。
こころいためて、観光客がいるあたりまで下りてくると、たたずまいのよい雑木林があり、車も停められたので、少し歩くと、キビタキが目の前に出て、頭上にはちょうどサンショウクイがとまった。足下にはジンヨウイチヤクソウが咲いている。やれやれ、と残りの握り飯を食べきって車に戻る。すると、大きなSUVが目の前に止まり、降りてきた観光客のおばさんに「ここには何があるんですか」といきなり聞かれ面食らう。「何って、どんなものですか?」「どんなものって、見晴らし台とか」「そういうのはありません。いい感じの林だけ」おばさんは最後まで怪訝そうな顔を崩さず、「おとうさん、何もないって!」と運転席に告げるのだった。
「遠望している限り、ふるさとの山はいつまでも美しい」堀越哲朗
[写真撮影 : 2017/06 - 長野県] [photo data : 06/2017 - Nagano]
ただ行ってみると、予想以上にあり様がよくなかった。松川から車で上がっていくと、次から次から、大きな工事車両に出迎えられる。もうあちこちでそんなことになっているからもはや驚きもないが、川は川と言うより工事現場という名の無法地帯になっていて、痛ましいから右側は見ないように運転する。治水は治水で了解するが、やり過ぎと言うことはないのか。ましてやリニアとかなんだあれは。
鹿塩まで着くと、谷がV字で深いから、多くの集落が谷から少し上がった台地に形成されていて、由緒正しい神社もその位置にある。スケールは違うが、秋葉街道でもだいぶ南の方の天竜川沿いとちょっと似ている。向かいの集落、次の集落という具合に同じ視線の先に捉えられるけれど、行こうとすると深い谷を越えていかねばならない。
鳥倉山の方、二児山の方、それぞれ一日ずつ割り振ってうろついたが、残念なことに山はほとんど見渡す限り杉の植林で、その景観には少なからず落胆した。まぁ、時間がないことを言い訳に、車に乗って、林道を使ってお手軽な探検をしているのだから、林道の周辺で伐採が済んでいたとしてもある意味当然なのであるが、それにしても、背後も、右も、左も、向かいも、奥も、見渡す限りの均一な林とは。林道脇も侵入植物がニョキニョキ生えて、林床は羊歯ばかり、気分はジュラシックパークだ。
そんなこんなで自然観察は低調に終始した。奥山では、鷹が二羽出たほかは、ハシブトガラスとホオジロ (!)がやたら多い。丹念に見ると、ビンズイがディスプレイしていたり、ルリビタキが避暑に上がってきていたりしたが、まぁあとはカケスと、カラ類と、そんなもの。ほ乳類も鹿一頭と、あとは捕虫網をふりまわすおっさんが一頭くらい。むしろ里山環境に近い集落周辺の方が環境は落ち着いていた。
こころいためて、観光客がいるあたりまで下りてくると、たたずまいのよい雑木林があり、車も停められたので、少し歩くと、キビタキが目の前に出て、頭上にはちょうどサンショウクイがとまった。足下にはジンヨウイチヤクソウが咲いている。やれやれ、と残りの握り飯を食べきって車に戻る。すると、大きなSUVが目の前に止まり、降りてきた観光客のおばさんに「ここには何があるんですか」といきなり聞かれ面食らう。「何って、どんなものですか?」「どんなものって、見晴らし台とか」「そういうのはありません。いい感じの林だけ」おばさんは最後まで怪訝そうな顔を崩さず、「おとうさん、何もないって!」と運転席に告げるのだった。
「遠望している限り、ふるさとの山はいつまでも美しい」堀越哲朗
[写真撮影 : 2017/06 - 長野県] [photo data : 06/2017 - Nagano]
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