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[這いずり日記] 下関・蓋井島 2012/春

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また下関に所用があり、今度こそ、ということで懸案の蓋井島に行ってきた。より正確に書くと、一週間の旅の前半は仕事などもしつつ下関周辺の、主として河口干潟などで鳥の観察を行い、後半は三泊四日で蓋井島に滞在した。I spent a week in Yamaguchi pref (western Japan) and stayed 4 days at a small island called Futaoi-jima.

でまぁ、いやぁ、面白い島だった。面積で北大東1/5という小さい島のほとんどが山地で、北大東の1/10ほどの島民は、一ヶ所しかない村落に集中して住んでいる。だから、村落を出ればすぐ濃密な林で人には会わないし、一方村落に戻れば意外と人口密度があり、村の婆ちゃんがシニアカーに乗ってSFのようにスイスイ走っている。つまり、山も、村も、それぞれにディープなのであった。

山に登る。強風の中、毛虫の親衛隊に困りつつ最初のピークに到達すると、この辺が根城らしいハヤブサがゴォォォォ、というすごい風切り音とともに頭上に現れて、つがいで僕の観察をはじめる。既に飽和状態に達している足許の花蜂類がブンブンと飛び回る。奥山に向かえば原生林の中、道はもはや踏み跡とも呼べないくらいに荒れていて、ガラガラと足場を崩せばその音にカラスバトが何羽も何羽も飛び立ってゆく。磯にミサゴ、裏山にマミチャジナイ、小さい島の小さいニッチに、少数の生き物がモザイク上に住んでいるのがとてもわかりやすい。

村に帰れば村の婆ちゃん達がおもしろい。あっちの谷に首の長い鳥がいたよ〜、と教えてくれる人。どっから来なすった、と声をかける人。扉も窓も開放の民宿に戻れば、宿の婆ちゃんが風呂を沸かしてくれて、食事中は世間話だ。家族の話、客の話、祭の話、海の話。気兼ねなどはもう超越したところで、田舎の親戚でも来たかのように、付かず離れず、気さくに接してもらえるのが有り難い。この位がちょうどよい。

四日間、雨が降れば部屋で本を読み、晴れれば森に入って、日が暮れる前に帰るという充実の日々を過ごした。スリランカから始まって、クレタ大東八丈と島通いが続いているが、閉じた環境だけにそれぞれの個性が煮詰まっていて、それぞれに面白い。それに、やれること、行ける場所が最初から限られていて、余分なことを考えないで済む、というのも短期間の観察には適しているように思う。今後も続けてみよう。ただ、蓋井は平均年齢が高い島だけに、少々今後が心配だ。

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[写真撮影:2012/04 - 山口県・蓋井島] [photo data : 04/2012 - Futaoi Island, Japan]
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