pmnh wildlife portrait archive : insects

オオマエグロメバエ - a Thick-headed Fly - Physocephala obscura

1410oomaeguromebae25_w
先月の旅日記のところでちょっと書いたところの、わづかに残っている野菊にしがみついていたかっこいいメバエ。


この仲間はもちろんハエなのだが、アナバチとかスズメバチとか狩蜂のなかまに擬態していてウエストが細い。まぁすごく砕いて書けば、雌ハエ(飛びながら)「あらこんにちは、いいお天気ですわね」狩蜂「はて、どなたさんでしたかな」雌ハエ「ごめんあそばせ」ブスッ、と卵を産んでしまうらしいのだが、詳細は見たことがないのでよくわからない。

1411stylogaster01(c)takashikomatsu
でも、メバエと言えば、最近のトピックは、奇書「裏山の奇人」に尽きる。東海大学出版部の「フィールドの生物学」シリーズは、若手生態学者の孤独や情熱を描いてほとんどハズレがないが、今のところ白眉は間違いなくこの本だ。購入する前は、「奇人」と自称するような奴(周りにたくさんいた)の著書なんて、と思っていたが、読んでびっくり、面白いやら感心するやら、そして感覚が共鳴することは本を持つ手が手がびりびり痺れるほどだ(嘘)。

こいつ将来どうなるのか、と読者に不安と期待を抱かせつつ、スズメバチを飼いならし、アリの巣をほじくり、この本のクライマックスに登場するのがペルーのジャングルにいる Stylogaster 属のメバエ。詳細は省略するが、このハエを追い求める渾身のドキュメントの挿図がここに引用したイラストだ。註として「スティロガステルの復元図の一例。小松の脳内では過剰に美化されているが、凡人にはただのハエにしか見えない ©Komatsu」とあった。一貫して著者は捨て身なのだ。

オオマエグロメバエはスレンダーな Stylogaster属のメバエ(イラストの上部に図案化された姿が見える)に比べると鈍重だし、可憐という要素はないが、それでも、しょぼくれた野菊にしゃがみ込
んだ僕の脳裏にファインダーを通して見えている姿は、アニメ美少女ではなくとも、いわゆる世間で通る「ハエ」とはきっと違うのだと思う。

まぁそれはともかく、裏山の奇人は久しぶりに面白い本だった。これなら「奇人」の自称も認める、というのが今の気持ちだ、尊敬の念を込めて。万人(著者の言う凡人)向けではないが、お勧めします。

1410oomaeguromebae251410oomaeguromebae26
1410oomaeguromebae27
1410oomaeguromebae28

[写真撮影 : 2014/10 - 長野県 - メバエ科 - 20mm? - 個人的博物館本館のハエ・アブのなかまのページへ]
[photo data : 10/2014 - Nagano. Japan - Conopidae - abt. 20mm? L - visit the main museum (“
True Flies, Robber Flies and Tabanid Flies”)]
[Sleeker_special_clear]