[お知らせ] 本館の鳥の部(日本語版)が改装、いや改築オープンしました
12/05/19 18:24 category :news
前からやるやる、次いでやっているやっていると言っていた本館の改装の第一次工事が終わりました。日本語の鳥の部です。いろいろあるセクションの一部分ではあるけど、最大のセクションなのでそれなりにインパクトはあります。
本館の方は10年ほどの間、更新の手が付いていなかったのだけれど、これは容れ物が溢れたことと、増える写真を収納するには構造上限界があったことに根本的な原因があります。最近になって、コンテンツの一部にフィルタをかけるようなことが比較的簡単にできるようになり、やっと増える写真に対応できるようになったと。これでまぁしばらくは持つでしょう。
今回の改装は「容れ物」あるいは建物の改装、というか改築なので、実は中身はほとんど変わっていません。言い換えると、ここ10年の間の空白、更新していない部分はそのまま未完成として残っています。これは今後の作業となります。
容れ物の再構成だけのためになぜこれほどの時間を要したかと言うと、それは分類の見直しを同時に進めたためです。2001年、この博物館のサイトを開いた当時は、DNA分析をベースとしたSAM分類(シブリー・アールキスト鳥類分類)の登場が古典的な分類法を過去のものに「しつつある」ような状況でした。ですので、個人的な興味もあって、1993年版の改訂 SAM分類に準拠して分類を行ったわけです。
それから20年の年月が経ち、スズメは相変わらずスズメだし、カラスもカラスなのだけれど、地道な研究が各分野で行われるようになり、分類は少しずつ少しずつ、形を変えています。SAM分類も「数年前に出たばかりの全く新しい分類法♡」から、「30年前に発表された当時としては画期的な〜今となっては間違いだらけの〜仮説」に変貌して、SAM分類に拠ることはもはや意義がなくなってしまいました。
国際鳥類学会議 IOC、アメリカ鳥学会AOU、コーネル大が維持している Clements、現時点では参照すべき分類法はいくつもあり、それぞれにバランスがとれて妥当なものです。ただバランスを取るために、どうしても保守的になるし、何より遅い。新しい研究が出て、様子を見て、統一見解として問題がなさそうな段階で初めて採り入れる。それは大事なことではありますが、個人的にはオーソリティが認めた安全確実なリストより、現時点でどういう議論があって、何がホットなのかということに興味がありますし、20年前に SAM分類を導入したような、とんがった部分はキープしたいと。だって面白くないじゃないですか、専門家でない個人がしがらみなくやっているサイトですしね。
ということで、今回は John Boyd III というフロリダ国際大学の経済学の先生が発表維持している、Taxonomy in Flux (TiF) チェックリストを採用しました。基本、最近の研究をベースとしながら、Boyd 氏が個人的な推測を交えて分類の全体像を提示しようとしている野心的なプロジェクトです。**会議が維持しているリストに比べて、多少危なっかしいことは認めますが、素早いですし、系統樹を可能な限り図示したり、背景を明確に説明しようと言う姿勢に共感でき、またそれをサイトで公開してくれますので、この博物館のサイトを構成する上で大変ためになりました。まぁ、これも、しばらくは持つでしょう(笑)。
分類体系の入れ替えという決断は、各部屋の構成の変更にとどまらず、種の分離や変更、学名の変更など、広範囲に及びました。今回から、亜種や亜科など、今まで記載していなかったレベルの説明の追加(およびフィルタ条件への適用)を行いましたので、それなりに工数がかかってしまい、とても空白期間の写真の追加までは手が回らなかった、というのが実情です。とは言え、まず容れ物がないと片づかない。容れ物があれば片づく(筈だ)ので、順番としてはこうなります。
もう一つ、特にここ10年のことですが、デジタルカメラの普及と高性能化をはじめとするさまざまな技術の進化と、コミュニティのすそ野の拡大というものがあって、同定の精度というものが、以前とは比べ物にならないくらい上がったということがあります。
20年前は、形態にしても、分布にしても、まぁ、ネット上には大した情報はなかったですし、例えば東南アジアの山の中で不思議な鳥を撮影した。というような時に、人に聞いたりということはあっても、原則は東南アジアの鳥の図鑑〜小さな絵や簡潔な説明〜や単発の文字ベースの探鳥レポートなどを出発点として、そこで完結するしかなかった。
現在は、世界中の色々な物好きが、日々精細な写真をアップロードしていますし、(よそ者の一二回の遭遇では手に負えないような)類似種の難しい同定を、生態写真をベースとして徹底的に比較検討していく動きがあるなど、今まではなかなかできなかったことが少しずつ可能になってきています。もちろん、分布や生態、渡り経路などについての専門家の研究が以前より容易に入手できるようになってきたことも大きい。つまり、「そこにいてもおかしくない種かどうか」「形態や生態からみてどの種・どの亜種に該当するか」の判断材料の質が格段に向上したというわけです。
従って、分類のやり直しと並行して、既に掲載している写真の同定の見直しというタスクも必然的に発生することになり、これも作業の遅延に大きく寄与しました(笑)。昔のピンボケ写真で見直そうにも如何ともしがたいようなケースも多かったのですが、それでも気になる点は修正した、というわけです。面倒ですが、それなりに面白い作業ではありました。
いずれにしても構想2年、作業1年の超大作(笑)。実は中身のない地道なリメイクなんだけど、そこは最近の写真を入れて見栄えを良くしたと。たぶん全米は泣かないと思うけど、裏のジョウビタキの奥さんくらいは頼めば啼いてくれそうな気がする。
今後の予定ですが、今回公開したものをベースに英語版をつくり、それから哺乳類。そこから虫に行くか、鳥の写真の追加に行くかはまだ決めていません。できれば、鳥の追加は他の建物の改築と並行して行いたいと思っています。
今回の改装は「容れ物」あるいは建物の改装、というか改築なので、実は中身はほとんど変わっていません。言い換えると、ここ10年の間の空白、更新していない部分はそのまま未完成として残っています。これは今後の作業となります。
容れ物の再構成だけのためになぜこれほどの時間を要したかと言うと、それは分類の見直しを同時に進めたためです。2001年、この博物館のサイトを開いた当時は、DNA分析をベースとしたSAM分類(シブリー・アールキスト鳥類分類)の登場が古典的な分類法を過去のものに「しつつある」ような状況でした。ですので、個人的な興味もあって、1993年版の改訂 SAM分類に準拠して分類を行ったわけです。
それから20年の年月が経ち、スズメは相変わらずスズメだし、カラスもカラスなのだけれど、地道な研究が各分野で行われるようになり、分類は少しずつ少しずつ、形を変えています。SAM分類も「数年前に出たばかりの全く新しい分類法♡」から、「30年前に発表された当時としては画期的な〜今となっては間違いだらけの〜仮説」に変貌して、SAM分類に拠ることはもはや意義がなくなってしまいました。
国際鳥類学会議 IOC、アメリカ鳥学会AOU、コーネル大が維持している Clements、現時点では参照すべき分類法はいくつもあり、それぞれにバランスがとれて妥当なものです。ただバランスを取るために、どうしても保守的になるし、何より遅い。新しい研究が出て、様子を見て、統一見解として問題がなさそうな段階で初めて採り入れる。それは大事なことではありますが、個人的にはオーソリティが認めた安全確実なリストより、現時点でどういう議論があって、何がホットなのかということに興味がありますし、20年前に SAM分類を導入したような、とんがった部分はキープしたいと。だって面白くないじゃないですか、専門家でない個人がしがらみなくやっているサイトですしね。
ということで、今回は John Boyd III というフロリダ国際大学の経済学の先生が発表維持している、Taxonomy in Flux (TiF) チェックリストを採用しました。基本、最近の研究をベースとしながら、Boyd 氏が個人的な推測を交えて分類の全体像を提示しようとしている野心的なプロジェクトです。**会議が維持しているリストに比べて、多少危なっかしいことは認めますが、素早いですし、系統樹を可能な限り図示したり、背景を明確に説明しようと言う姿勢に共感でき、またそれをサイトで公開してくれますので、この博物館のサイトを構成する上で大変ためになりました。まぁ、これも、しばらくは持つでしょう(笑)。
分類体系の入れ替えという決断は、各部屋の構成の変更にとどまらず、種の分離や変更、学名の変更など、広範囲に及びました。今回から、亜種や亜科など、今まで記載していなかったレベルの説明の追加(およびフィルタ条件への適用)を行いましたので、それなりに工数がかかってしまい、とても空白期間の写真の追加までは手が回らなかった、というのが実情です。とは言え、まず容れ物がないと片づかない。容れ物があれば片づく(筈だ)ので、順番としてはこうなります。
もう一つ、特にここ10年のことですが、デジタルカメラの普及と高性能化をはじめとするさまざまな技術の進化と、コミュニティのすそ野の拡大というものがあって、同定の精度というものが、以前とは比べ物にならないくらい上がったということがあります。
20年前は、形態にしても、分布にしても、まぁ、ネット上には大した情報はなかったですし、例えば東南アジアの山の中で不思議な鳥を撮影した。というような時に、人に聞いたりということはあっても、原則は東南アジアの鳥の図鑑〜小さな絵や簡潔な説明〜や単発の文字ベースの探鳥レポートなどを出発点として、そこで完結するしかなかった。
現在は、世界中の色々な物好きが、日々精細な写真をアップロードしていますし、(よそ者の一二回の遭遇では手に負えないような)類似種の難しい同定を、生態写真をベースとして徹底的に比較検討していく動きがあるなど、今まではなかなかできなかったことが少しずつ可能になってきています。もちろん、分布や生態、渡り経路などについての専門家の研究が以前より容易に入手できるようになってきたことも大きい。つまり、「そこにいてもおかしくない種かどうか」「形態や生態からみてどの種・どの亜種に該当するか」の判断材料の質が格段に向上したというわけです。
従って、分類のやり直しと並行して、既に掲載している写真の同定の見直しというタスクも必然的に発生することになり、これも作業の遅延に大きく寄与しました(笑)。昔のピンボケ写真で見直そうにも如何ともしがたいようなケースも多かったのですが、それでも気になる点は修正した、というわけです。面倒ですが、それなりに面白い作業ではありました。
いずれにしても構想2年、作業1年の超大作(笑)。実は中身のない地道なリメイクなんだけど、そこは最近の写真を入れて見栄えを良くしたと。たぶん全米は泣かないと思うけど、裏のジョウビタキの奥さんくらいは頼めば啼いてくれそうな気がする。
今後の予定ですが、今回公開したものをベースに英語版をつくり、それから哺乳類。そこから虫に行くか、鳥の写真の追加に行くかはまだ決めていません。できれば、鳥の追加は他の建物の改築と並行して行いたいと思っています。
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