pmnh wildlife portrait archive : travelog

[更新情報] スリナムの鳥 その11 (パラマリボその2、パート1/2)

1709amatopo7207_w
個人的博物館本館を更新しました。スリナム・パラマリボ周辺の鳥。あと一回で全部終了の見込み。

今回の更新リスト。

Black-crested Antshrike, Buff-throated Woodcreeper, Yellow-chinned Spinetail, Greater Ani, Little Cuckoo, Magnificent Fregatebird, Black Vulture, Turkey Vulture, Ruddy Ground-Dove, Yellow-headed Caracara, Large-billed Tern, Laughing Gull, Yellow-billed Tern, Boat-billed Heron, Little Blue Heron, Snowy Egret, Tricolored Heron, Yellow-crowned Night-Heron, Black Hawk-Eagle, Common Black Hawk, Grey-lined Hawk, Osprey, Roadside Hawk, Rufous Crab-Hawk, Snail Kite, Scarlet Ibis, Spotted Puffbird, Pied Puffbird.

エボシアリモズ、キノドオニキバシリ、キバシリカマドドリ、オオオニハシカッコウ、ヒメリスカッコウ、アメリカグンカンドリ, クロコンドル、ヒメコンドル、ケアシスズメバト、キバラカラカラ、アマゾンアジサシ、オオハシアジサシ、ワライカモメ、ユキコサギ、ヒロハシサギ、シラガゴイ、ヒメアカクロサギ、サンショクサギ、オオハシノスリ、クロクマタカ、タニシトビ、クロノスリ、カニクイノスリ、ハイイロノスリ、ショウジョウトキ、マダラオオガシラ、シロクロオオガシラ。

今回のハイライトは、やっぱり
トキ・ヘラサギのページのショウジョウトキ。スリナムは赤い鳥が多いが、これはまた別の赤い鳥。



何か書いて置こうと思うが、ろくなことを思い出さない。まぁ、やはりまずは帰りのセスナのことだろうか。

載貨重量超過のカヌーに乗って無事にアマトポまで辿り着いた僕らは、一週間前に約束した日時、空港の送迎デッキ(*写真参照)に腰を下ろしのんびりと飛行機を待った。ピラニアの関門を無事突破した理事はルンルンだが、歳とともに飛行機の揺れに弱くなってきた僕は、これから二時間のフライトを想像してもはや溺れた犬みたいな状況だ。あまり気流が悪くないといいな。

↓空港の送迎ビルとデッキ
1709amatopo4920

ふつうに可愛いネピの娘たちを含め、子だくさんのインディオの家族は総出で見送りだ。村人にも珍しいイベントというだけではなくて、彼らにとっても、たまの飛行機は物資の輸送の重要な機会なのだ。連中が包み隠した荷物をさっとチェックした鳥仙人は、やっぱり珍しい鳥が生きたまま荷物に入っている、と苦虫を噛みつぶしている。まぁそう言うのを売って、船外機のガソリンを買ったりするわけだ。貴重な現金収入の資源とは言え、そして僕らに何も言う資格がないとしても、やれやれではある。

↓ネピの子たち(の一部)。みんな可愛いな
1709amatopo7207

行きに較べると雲が多くて、気流は良くなかった。雲に突っ込むたび、がががっががっががががっと暴れたり、ひゅうぅぅぅぅっっと奈落の方に落ちていったりする飛行機の中、目をつぶってひたすら耐える。アメリカで操縦の技術を学んだと言うパイロットはやや緊張の面持ちで、それでも、これくらい全然大丈夫ですよ、と明るい声で乗客を励ます。僕は、目をつぶりながら、気流の乱れ具合と、自分の心持ちの乱れ具合をじっと測った。離陸して30分。だいたいの揺れ幅がつかめてくる。うん、これくらいなら大丈夫だ。何とかなるだろう。

1709amatopo5512

しかし、大丈夫ではないのが一人居たのだ。鳥仙人。何やらそわそわ、おたおたして、パイロットにしきりに何か話しかけ出す。オランダ語だから何を言っているか判らないが、話を聞くパイロットの顔に緊張が走っている。どうも急を要するようだ。やがて、パイロットがグローブボックスみたいなところから嘔吐袋を出したあたりから、わからないなりに少しずつ事情が感じ取れてきた。間違いない、これはシモの話だ。障害のこともあって、鳥仙人が排泄に問題を抱えていることは皆知っている...とは言え、まだ離陸したばかり、三分の一くらいしか飛んでないではないか。

「...大かな小かな」
「...大だったら大変ね」
日本語で理事と話す。皆、考えることは同じだ。後を見ると、ナヴィータも表情がこわばっている。


それにしても、やっと心の平静を保つ見通しが立ったくらいの、いまギリギリの僕にはこれはつらい。飛行機と言っても、三畳間くらいのスペースに、五人が片寄せあって座っている空間だ。お互いの顔はすぐそこにある。音や匂いで、嘔吐したり、パニックしないか、考えただけで暗澹たる気分になる。予測しないところから、最後に大きいのが来たなあ、と、上空何百メートル、ガタガタ揺れ続ける飛行機の中でじっと体を丸めた。せめて、この揺れが収まれば、鳥仙人だって楽に違いないのだが。プロペラ機って、気流が良い時と悪い時とでは気分は雲泥の差だから。人生観が変わるくらいに。

1709amatopo5578

..と祈るように願ってしばし。その願いが通じたのだろうか、段々と雲が視界から消えてきて、セスナは徐々に安定してきた。それにつれて、鳥仙人も落ち着きを取り戻してきたようだ。静けさが機内に戻る。ひょっとしたら大丈夫かも知れない。あとは余分な刺戟は与えないよう、何も言わないよう、景色を眺め、すきまから入ってくる気流を浴びながら、三十分、一時間、息を殺して過ごした。

やがて僕らは首都上空に達し、気分は一気に明るくなる。やれやれだ!まもなく着陸、もう大丈夫という段になって、僕は鳥仙人に尋ねた。

「...大なんだろ」
「小だよ小!」


これには機内一同、ずっこけた。なーんだ小かよ、早く言えよばかやろう。

「小なのに真剣な顔して何やり取りしてたんだ」
「悪かったな、袋もらったんだけど出なくて、あきらめた」
「だから、パイロットにさ、もっとスピード出せ、それから着陸する時はトイレのすぐ前に飛行機を止めろって言ったんだ」
「したらこいつ、全力を尽くしますだってよ、ガハハハ」
ピンチをほぼ脱した鳥仙人は絶好調なのだった。

↓アマトポのスカシバガ

1709amatopo3947

「心配して損したよ。だいたい、小なら、そんなもん、ドア少し開けて横からやったら良かったじゃないか」
「それも考えた!けど、踏ん切りがつかなくてさ」
「まぁ、前の席で大気中に放水したら、窓から後席にシャワーが来るかもなあ、あははは」
「暑い日だからちょうど良かったか、ガハハハ」


すると黙って会話を聞いていたナヴィータが、会話に参加した。
「うふふふ、そしたら、あんたの顔を見るのも今日が最後になってたわね」
ナヴィータを見ると、顔も目も、全然笑ってなかった。というか怒っている。普段からきつめの美人顔だけに、なおさら怖かった。


↓アマトポの川岸は、シロチョウ・キチョウだらけ。ご先祖様のように舞っている。
1709amatopo4963

やがて何もなかったように5人乗りのセスナは着陸し、冒険は終わり。冒険終了の号令は、トイレはあちらです!というパイロットの叫びだった。

↓スリナムにもハムシはいるのだ
1709amatopo3937


[写真撮影 : 2017/09 - スリナム・アマトポ] [photo data : 09/2017 - Amatopo, Suriname]



[Sleeker_special_clear]