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[這いずり日記] タキタキはおもしろい〜スリナム 2017/夏その2

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スリナムの民族や言語の状況は複雑だ。もとの先住民族であるインディオがいたところに、オランダ植民地時代を通じて、インド人、マルーン(アフリカから奴隷として連れて来られ、途中で逃亡して森林で生活している/していた人々)、インドネシア人、黒人奴隷、白人、中国人などが入ってきた国で、宗教もヒンドゥ、イスラーム、キリスト教がだいたい 1/3 ずつ。

ただし、総人口がたかだか50万。その人口の九割が首都パラマリボ周辺に居住している。中国人を除き混血化も進んでいるので、ここまで民族模様が複雑になると、逆に却って単純化する面もある。もちろんクレオールがマルーンと対立したり、白人を差別する風潮もあったりするようだが、何より、多くのひとが当たり前に「混ざっている」ので、現実問題として、いちいち「あの人は何人で何だから」みたいな分類が難しくなっている。人を紹介されて、家族は?と聞くと、親類のマジョリティはインド系で、おばあさんがインディオで、あと白人が少し、それで宗教はこれ、みたいなことはごく普通にある。そして、ギアナ三か国の間では割合皆、頻繁に移動しているようだ。だから、印象で大ざっぱに語れば、基本的には各自の来し方には寛容なお国柄だ。ゆるくてよい。

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パラマリボを出て森に分け入ると、マルーンの集落があったり、インディオの集落があったりするわけだが、ものを尋ねるにせよ、頼むにせよ、その時に重要になるのがスリナム語、というか現地で言うところのタキタキになる。聞けばタキタキはスリナムの人はだいたい分かると言い、国境をまたぐと通じないとも言う。鳥仙人はオランダ人というかフリスク人で母国語はオランダ語だ(と思う)が、フランス領ギアナに住んだことがあるからフランス語もわかるし、英語も達者だ。そしてスリナム暮らしも長いから、タキタキがある程度わかる。

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そしてこのタキタキは、発音が愉快だ。こう言うと失礼だが、昔の映画で、どこかのステレオタイプな架空の原住民が喋っているような音で喋る。そして開音節が多くて、日本人にも大変聞き取りやすい。例えば道に迷って、鳥仙人がひとに道を尋ねたとすると「ナントカボンチャンベラベラムスコンバカ」(←適当)みたいな感じの返事が返ってくる。特に道のやり取りでは文末に「バカ」「ムスコンバカ」が頻繁につくので、僕は早速これを覚えて、現地人の口まねをして遊んでいた。ついでにオウムの如くまるまる一文、発音のまねをすると、現地のマルーンはこりゃ心底たまげたー、という顔をして目を真ん丸にして驚く。これが面白い。そして、鳥仙人経由、知ってるか、ムスコンバカは日本語では My son is stupid. の意味だぜ。というと、今度は口を開けて大笑いする。まことにのどかで楽しい。

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だから、帰国して、タキタキが英語ベースだということを知って震撼した。てっきり公用語オランダ語か、あるいはどこかのインディオの言葉を発展させて出来た言葉だと漠然と思っていたが、文献を当たるとこれが立派なピジン英語ベースのクレオール言語だ。しかも、それにしても、旅行中、ムスコンバカ、ムスコンバカとあちこちで冗談を言ってきたわけだが、それが Must Come Back だったとは! 前に
リスザルのところで、現地語でモキモキだと書いたが、これも Monkey Monkey で間違いなかった。なんだかこの調子なら速攻で習得できそうな気がする。

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ともあれ、道に迷ったり、早速泥濘地に突っ込まされたりしながら、まずは慣らし運転とでもいうべきか、順調にサバンナ地域での観察を行った。池を越えたり穴にはまったり、ドライバーは冷や冷やだが、ダットラ(正式名称ニッサンフロンティア)は好調である。本人たちにしても忘れ物もなく快調だが、唯一惜しまれるのは、足回りを登山靴にしたこと。最後までゴム長か、登山靴か、大いに迷ったのだが、主にかさばるから、という理由で登山靴にした。結果は、見事に足首のところから虫刺され、ダニ刺され。とくに理事がひどくて、既に膝から下はボコボコである。13年前はどうだったかと写真を見ると似たようなことになっていたから、こんなものだろうと慰める。とは言えこれからダム湖の島に寄り道してから、密林の奥に入っていく。ああゴム長にしとけば良かった。先が思いやられる。

p.s. なお、ダム湖のダムがある場所は、アフォバカ Afobaka である。

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[写真撮影 : 2017/08 - スリナム] [photo data : 08/2017 - Suriname]
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