[這いずり日記] 13年ひと昔〜もう一回スリナム 2017/夏その1
09/28/17 04:02 category :travelog
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ディスプレイいっぱいに表示すると森が、川が、湖が、きらきらと眼を射て痛い。虚を衝かれたから理事を呼び「また行こうか?」と思わず尋ねると、理事も心射抜かれた様子で「行こう」と即答する。こうして、当博物館としてはやや異例の同一地域再訪は瞬時にして決したのだった。(理事はほんとうはフレンチギアナに行きたかったそうだが)
まぁテキトーに、というと語弊があるが、あまり行く前に煮詰めすぎると面白くないから、ざっくりと三週間の予定を決め、スリナムに向かった。KLMのアムステルダム直行便は廃止されていて、パリ経由、12、2.5、8.5、搭乗だけで約24時間かかる。昨今の情勢から空港のコントロールはやたら厳しいが、一方で CDGでの搭乗手続きは荷物チェック以外全くの無人になっている。そもそもチェックインは事前だし、空港では荷物のタグや搭乗券を機械で印刷して、イミグレも荷物の預け入れもすべてセルフ方式。フランスならではのダメダメシステムが少しずつ進歩して、とうとう実用に耐えるだけのレベルに達したことは喜ばしいが、こうしてまた雇用が減るんだろうな。世界のあちこちで。
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オランダからパラマリボ行きに乗ると、気分は一気にローカルだ。機内ではカラフルな衣装に身を包んだ、太目のおば(あ)さん達がぐっと増える。で、その太目のおば(あ)さん達が、「ほいあんた、荷物」という調子で、通りかかる男どもに対して、自分の荷物を上のコンパートメントに乗せて頂戴と依頼する、というより乗せなさいと気ままに指令する。しかも人種に無頓着な気風を反映して、通りかかったのが中国人だろうが、白人だろうが黒人だろうが、もちろん日本人だろうがお構いなく言いつける。国から仲間とやって来たらしい中国人の若い男が、急な命令にたじろぎながら婆さんの重い荷物を懸命に持ち上げるのも見ていて微笑ましい。上から何とかだとか中国人がどうのだとか、いちいち島国根性の偏狭な日本人をまとめて研修に派遣したいくらい(笑)。
余談だが、飛行中、通路より幅の広い婆さんがトイレに行く時は見物だった。前方に婆さんを認めた対向者は一様にぎょっとして、黒人は分からないが、白人は顔面ますます蒼白である。もちろん、座っていて、いきなり肘掛けのひじを腹の肉でこすられた僕も驚愕である。
パラマリボの空港は変わっていなかった。田舎空港の風情も、イミグレの行列も全く同じ。違うのは客に中国人が増えたことくらい。ああ、こうだったなあ、こんなだったなあ、と、思いだし、確認し、出口に進むと、鳥仙人は一番前で待っていた。まずは熱い抱擁から。人のことは言えないが、僕より7つ年上、少し老けた。それに、持病も多少進んだようだ。お互いに、地球の反対側で13年。なんだか不思議だが、再会できてうれしい。しかし、金髪で長身、迷彩柄のパジャマみたいな服を着て、三メートル近くありそうな自然木の杖をついて歩く(足の不自由のため)鳥仙人は街ではすこぶる異形、みな一瞬ギョッとして見るのがおかしい。
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免許持ってこいよと言われていたから、多少の運転は予期していたが、空港でじゃあ運転よろしく、とキーを渡されたのには驚いた。しかも、目の前にあるのは、カンガルーバンパーも眩しい、15年物、というか21万キロもののニッサンのおんぼろピックアップだ。一体どこ走るんですか?というようなごっついタイヤを履いている。「どうだい、運転できるかい」ってそりゃできますけどね、これからどういうところを運転させられるのか、想像するとちょっと胸焼けがするのだった。
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久しぶりのマニュアルシフト、古式ゆかしいディーゼルエンジンをガラガラと回し、おっかなびっくりバンプだらけの道を進んでいくと、それでも楽しい。右ハンドルだし、日本からの中古か、そうなら車も日本人が懐かしいんじゃないかとか考えたり(後で調べたら日本産ではなさそうだ)、そう言えばこれで僕の運転歴も、南極以外全大陸コンプリートだな、とか気づいたり、運転しながら自然と笑みがこぼれる。まぁ、窓がちゃんと開いて、時々冷房が動くだけでも十分だ。ホイールハブがキリキリ鳴くし、ボディはぐわんぐわん揺れるけれども。
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中国人が経営する、鉄格子のついた食料店の前で買い物に車を停めると、早速マルーン(旧称ブッシュネグロ。逃亡奴隷出身の黒人系)の姉ちゃんが尻をふりふりキャッサバの菓子を売りに来る。パイナップルはいってておいしいわよーん、ごめんな、俺いま一文無しなんだ、あらそうなのーん(ニヤリ)なんて調子で、まぁ、ともあれ、旅は始まった。今日は取り敢えず、近くのキャンプ場まで。
(以下、キャンプ場の朝)
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[写真撮影 : 2017/08 - スリナム] [photo data : 08/2017 - Suriname]
まぁテキトーに、というと語弊があるが、あまり行く前に煮詰めすぎると面白くないから、ざっくりと三週間の予定を決め、スリナムに向かった。KLMのアムステルダム直行便は廃止されていて、パリ経由、12、2.5、8.5、搭乗だけで約24時間かかる。昨今の情勢から空港のコントロールはやたら厳しいが、一方で CDGでの搭乗手続きは荷物チェック以外全くの無人になっている。そもそもチェックインは事前だし、空港では荷物のタグや搭乗券を機械で印刷して、イミグレも荷物の預け入れもすべてセルフ方式。フランスならではのダメダメシステムが少しずつ進歩して、とうとう実用に耐えるだけのレベルに達したことは喜ばしいが、こうしてまた雇用が減るんだろうな。世界のあちこちで。
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オランダからパラマリボ行きに乗ると、気分は一気にローカルだ。機内ではカラフルな衣装に身を包んだ、太目のおば(あ)さん達がぐっと増える。で、その太目のおば(あ)さん達が、「ほいあんた、荷物」という調子で、通りかかる男どもに対して、自分の荷物を上のコンパートメントに乗せて頂戴と依頼する、というより乗せなさいと気ままに指令する。しかも人種に無頓着な気風を反映して、通りかかったのが中国人だろうが、白人だろうが黒人だろうが、もちろん日本人だろうがお構いなく言いつける。国から仲間とやって来たらしい中国人の若い男が、急な命令にたじろぎながら婆さんの重い荷物を懸命に持ち上げるのも見ていて微笑ましい。上から何とかだとか中国人がどうのだとか、いちいち島国根性の偏狭な日本人をまとめて研修に派遣したいくらい(笑)。
余談だが、飛行中、通路より幅の広い婆さんがトイレに行く時は見物だった。前方に婆さんを認めた対向者は一様にぎょっとして、黒人は分からないが、白人は顔面ますます蒼白である。もちろん、座っていて、いきなり肘掛けのひじを腹の肉でこすられた僕も驚愕である。
パラマリボの空港は変わっていなかった。田舎空港の風情も、イミグレの行列も全く同じ。違うのは客に中国人が増えたことくらい。ああ、こうだったなあ、こんなだったなあ、と、思いだし、確認し、出口に進むと、鳥仙人は一番前で待っていた。まずは熱い抱擁から。人のことは言えないが、僕より7つ年上、少し老けた。それに、持病も多少進んだようだ。お互いに、地球の反対側で13年。なんだか不思議だが、再会できてうれしい。しかし、金髪で長身、迷彩柄のパジャマみたいな服を着て、三メートル近くありそうな自然木の杖をついて歩く(足の不自由のため)鳥仙人は街ではすこぶる異形、みな一瞬ギョッとして見るのがおかしい。
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免許持ってこいよと言われていたから、多少の運転は予期していたが、空港でじゃあ運転よろしく、とキーを渡されたのには驚いた。しかも、目の前にあるのは、カンガルーバンパーも眩しい、15年物、というか21万キロもののニッサンのおんぼろピックアップだ。一体どこ走るんですか?というようなごっついタイヤを履いている。「どうだい、運転できるかい」ってそりゃできますけどね、これからどういうところを運転させられるのか、想像するとちょっと胸焼けがするのだった。
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久しぶりのマニュアルシフト、古式ゆかしいディーゼルエンジンをガラガラと回し、おっかなびっくりバンプだらけの道を進んでいくと、それでも楽しい。右ハンドルだし、日本からの中古か、そうなら車も日本人が懐かしいんじゃないかとか考えたり(後で調べたら日本産ではなさそうだ)、そう言えばこれで僕の運転歴も、南極以外全大陸コンプリートだな、とか気づいたり、運転しながら自然と笑みがこぼれる。まぁ、窓がちゃんと開いて、時々冷房が動くだけでも十分だ。ホイールハブがキリキリ鳴くし、ボディはぐわんぐわん揺れるけれども。
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中国人が経営する、鉄格子のついた食料店の前で買い物に車を停めると、早速マルーン(旧称ブッシュネグロ。逃亡奴隷出身の黒人系)の姉ちゃんが尻をふりふりキャッサバの菓子を売りに来る。パイナップルはいってておいしいわよーん、ごめんな、俺いま一文無しなんだ、あらそうなのーん(ニヤリ)なんて調子で、まぁ、ともあれ、旅は始まった。今日は取り敢えず、近くのキャンプ場まで。
(以下、キャンプ場の朝)
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[写真撮影 : 2017/08 - スリナム] [photo data : 08/2017 - Suriname]
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