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[這いずり日記] 北海道・道北 2014/冬

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留萌に所用ができたので、用事が済んだ後、二泊だけ延泊し、北は天塩の先まで様子を窺い、南は雄冬から浜益へと抜けて帰ってきた。天塩から留萌は、寒かった25年前の5月以来となる。話には聞いていたし、覚悟もしていたが、それにしても凄まじい道北の真冬だった。

さすがに道北では用心をせざるを得ないので、車は四駆らしい四駆をレンタルし、凍った道をゴリゴリと進む。時々雪が降り出すとホワイトアウトとなり、もう何も見えない。さっと雪の幕が裂けると、今度は荒れた海、風を切って飛ぶカモメが突然思い掛けない方向から視界に入ってくる。この辺の、神様に紙芝居でもてあそばれているような感覚は、昔の南アルプスの深南部の冬山みたいで、うれしい。

最近は長野の避難小屋往復ばかりしていたから、しばらくぶりに違う方角に進むことが出来て、気分はハイになる。あれはあれで日常ではないが、いわばもう一つの日常であって、旅らしい、非日常の感覚は本当に久しぶりだ。

気温は長野の避難小屋とだいたい同じ、夜は氷点下10度前後、日中も氷点下あたりをうろうろしている位だから、多少は高をくくっていたのだが、違うのは風で、遮るもののない日本海から風がびょうびょうと吹きすさぶ。海岸の崖の上で
ワシカモメを見ていると、寒さは完全防備の衣服を貫いて、体感温度は堪え難いレベルまで下がる。もう脳卒中か心臓マヒを起こしそうなくらいに厳しい。

走れば海岸線、風の奥にぽつり、ぽつりと集落や漁港がある。寒々とした港内に海ガモが淡々と浮かんでいるが、人はあまり見かけない。カラスとカモメだけが、どこへ行っても一番目立つ。地理的にも風土的にも、さいはてという形容がぴったりの寂しさだが、一方、心から強く湧いてくる、この喜びに似た感情はなんだろう。久しぶりの非日常だから、というだけの理由ではなさそうだ。

今回はほっぺたがタマゴボーロみたいなユキホオジロが見られたらよいな、と、それだけ期待していたのだが、ユキホオジロもキレンジャクも、とにかく陸の鳥はほとんど見なかった。それはそれで残念だが、宿題が残ったことが実はうれしい。季節は分からないが、道北にはまた来ることになるだろう。

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[写真撮影 : 2014/02 - 北海道] [photo data : 02/2014 - Hokkaido]
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