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[這いずり日記] 愛媛・香川 2011/初夏

初夏と言っても、放射能は言わずもがな、今年は既に梅雨入り、台風まで来ているので爽やかさはいささかも感じられないが、ともあれ高松に所用があり、早起きして出かけた。所用自体は予定通りにその日の昼には終わり、そのまま何もなければ内場や竜王山など、高松の奥山に行こうかと思っていたのだが、結局、伊予三島に二泊することにした。


三島には昔からちょくちょく来るが、来ては用事を済ませて帰るだけなので、経験としては点の経験しかない。ならばそれを線に、あわよくば面にしようともくろみ、観音寺の三豊干拓地、いつも仰ぎ見るだけだった翠波高原、さらに山越えして別子方面、と少しずつ足を伸ばした。良かったのは断然、別子山の谷だ。こんなところに、こんな深くて、人けのない谷が潜んでいたことに大いに驚いた。

こうしてあちこちを訪れていると、何だかもう、見るべきものはどこにも何もないようなやるせなさ、喪失感に襲われることがあるが、まだ山襞の奥に見知らぬ谷があって、その谷が他の谷と明らかに違う感覚を与えてくれるという事実は、何よりもありがたい。ほんとうに。

もとより二泊、実質二日の初日が雨がちというなか、双翅類のブンブン飛び交う翠波高原に時間を配分し過ぎて(その代わりカッコウは堪能した)別子山にほとんど居られなかったのが返す返すも心残り。まぁ、また三島に来る用事もありそうだから、今度はじっくりと別子の谷に日にちを割くことにしよう。


[写真撮影 : 2011/06 : 香川県観音寺市・三豊干拓地] [photo data : 06/2011, Kan'onji, Kagawa, Japan]
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