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[這いずり日記] 広島周辺 2011/春

名古屋から久しぶりに帰り、東京の家で三日ほど過ごした後、今度は広島に出かけた。疎開がてら親戚の家に一週間くらい、という予定だったが、理事は急ぎの仕事が入って三日で切り上げ。僕は客先まわりをかねて若干延長。という結果になってバラバラに帰った。毎日勤めに出る必要がないとは言え、自営業者にも時々場所に拘束される仕事というものがあるのだ。


瀬戸内の客先まわりを集中的に済ませて、あとはこれまであまり来たことのない呉をベースに四日ほど過ごす。一応疎開でもあり、ましてや夫婦分離状態でもあるので、山陰とか、中国山地とか、そういう誘惑は退けて、基本的には動きやすい都市の近く、里山や川の中流、海岸や沿岸の島を日帰りで訪ねた。

広島というと、連休前の太田川の中流で暑くて、暑くて、その割に成果の全くなかった五、六年前の自然観察の苦痛を思い出すが、今回はまだそこまで夏が近づいていなくて、歩いても快適だった。冬鳥が去って、渡りの鳥がまだ来ない端境期かな、とも思ったのだが、存外に冬鳥はまだ居残っていて、山も浜もそれなりに賑わっている。ヤマセミ、コクガン、ヒクイナ。それからアオバト。

東京生まれの東京育ちだ。ただこうして家を離れて風まかせに移動していて、不便や疲労を覚えるのはやむを得ないとしても、意外なほど喪失感の如きものは感じない。確かに家もあり、親兄弟もあるが、土地や風土との関わりは希薄なのかも知れない。それが幸せなのか、不幸なのか、喪失なのか、獲得なのか。今結論は出せないが、そうか、身捨つるほどの故郷などそもそも最初からなかったのだな、などと考えつつ、帰りの新幹線に乗り込んだ。


[写真撮影 : 2011/04 - 広島・宮島] [photo data : 04/2011 - Miyajima Island, Hiroshima]
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