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[這いずり日記] 西南トラキア地方、あるいはギリシャ・エヴロス県 2009/厳冬

ついこないだのような気がしていたが、前回ギリシャの地を踏んでから既に15年が経っていた。通算すると確かに二回目なのだが、一回目では三ヶ月余を過ごしていて、色々な意味でギリシャは僕にとって特別な土地だ。雑で、自己中心的で、でもストレートなギリシャ人に囲まれていると、何だか心の底からほっとする気がしてくる。アテネでの仕事が予定通りに片づいたので、エヴロス県と言ったらよいのか、西南トラキアと言ったらよいのか、とにかくギリシャの東北端、トルコ・ブルガリア国境地帯へ出かけた。ほとんど情報もなくて、情報を集める時間もなくて、いや情報がないのがいいと思ったりして、まぁぶっつけ本番である。
アレクサンドルポリから車でトコトコと走っていくと、かつてどこかで見たようだけれど、無表情な風景が連なっていた。最初は没個性かとも思ったのだが、それもどうも違うようだ。古い建物が戦いで壊されてしまっているということも大きい。過去の歴史、国境地帯であることが微妙な影を落としているようだ。何日か過ごして、フィルムを抜き取れと村人から撮影中に恫喝されたりすると、底抜けに明るくてうるさい地中海のアテネから、東欧に向かって800km進んだ場所にある土地なのだ、という感じが段々してくる。でも恫喝に強く反論するとたじろぐ辺りは確かにまだまだギリシャなのだった。

重要な渡り鳥経路に鎮座するエヴロス川河口の潟湖地域を中心として、六日間を過ごした。相変わらず高い狩猟圧力、農業との軋轢など問題は山積のようだけれど、全体に鳥相は豊かである。春が来れば、近隣の家々にもコウノトリが来るそうだ。コウノトリは、一般人が入れない国境のエヴロス川で、手付かずの自然を満喫するのだろう。コウノトリか。次が何時になるか全然判らないけれど、今度は春から夏に行ってみたいと思うのだった。



写真はエヴロスデルタにて。ヤニス、タソスはじめ、便宜を図って下さった公園事務所の皆さんありがとうございました。 At Evros Delta, Greece.
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