pmnh wildlife portrait archive : travelog

[這いずり日記] 南大東島・北大東島 2012/厳冬

1202minamidaito01_w
珍しく長い間どこにも出ておらず内心うずうずしていたところに、理事が去年と同じ仕事でまたアフリカに行くというので、腹を決めて一週間出かけることにした。最初、去年と同じに北を目指そうと思ったが、今年は豪雪がきつい。それでも佐渡島に行く予定を立てたところで震度5強の地震。すっかり嫌気が差して、一転南を目指すことにした。

タイ、台灣、沖縄、小笠原、と地図を眺めていると、大東諸島が目に入った。喫茶店でも隅っこを探して座る性質だから、当然大東島も調べたことがあって、あまり人の歴史がなくてちょっと変わった状態だとか、南太平洋の火山島が微妙に生き延びてきた島だとか、多少の知識はある。渡り鳥にはやや早い気もするが、それは他の場所でも同じことだし、むしろこういう半端な季節だから、大東島「でも」行くかぁ、と即決した。

行ってみれば、二つ並んでいるとは言え絶海の孤島である上に、本来の原生林はほぼ伐採されてサトウキビ畑になっているから、固有種、外来種、それぞれが存在を主張するものの、全般に動物の種類はすくない。渡り鳥も大東島コース専門の
ムナグロ以外はほぼ皆無で、島内のどこに行っても見覚えのある連中が居る、という状況が多くあらわれた。南北を比べると、南の方が広くて池が大きい分自然に余裕があるが、北の方が全般に開けていない趣があり、観察は北の方がたのしい。それぞれの島に、居るもの居ないもの、多いもの少ないものがあるのも面白い。

ダイトウオオコウモリを調査のために捕獲すると、噛まず騒がず、茫然自失で無抵抗だというが、長らく閉じた環境で平和に個体数を維持してきた、という島風はそこここに感じられる。
ヤモリにしても、カエルにしても、ハエにしても、あまり敏感に逃げる風がない。ちょうど昆虫の近接撮影について考えているアイデアがあったのだが、実践の場としてはだから実に適当であった。訝しげな視線を送る人もいないし、原っぱで、道端で、雨のぬかるみでどろんこになりながら、ハナアブアワフキに、思う存分つきあってもらった。ムナグロも過敏なところはなくて、礼儀さえ尽くせば、約10mの距離を置いて、周囲360度ムナグロという有り様。

聞けば大東島の観光は意表を突いて今時分がハイシーズンなのだという。なぜ?と聞くに理由がはっきりしない。釣りにはシーズンはないし、夏も暑過ぎることはないらしいし、動植物もあまり変わりない。それでも尋ねると、「強いて言えば、暖かいからなあ。ほら、内地は冬でしょう」「夏になるとみんなビーチのあるきれいな島の方に行ってしまうからね」「夏は沖縄便の切符が高いからねえ」「それでまぁ大東島でも、ということになるさぁ」というような事情らしい。つまり皆僕のように大東島を選んでくるわけだ。今もって何とも微妙な立ち位置の島。実におもしろい。

1202minamidaito27

[写真撮影 : 2012/02 - 南大東島] [photo data : 02/2012 - Minami Daito Island]
[Sleeker_special_clear]