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[這いずり日記] スリランカ 2011/夏

スリランカに行ってきた。ここのところスリランカとちょっとした縁があり、もともと数年前に行く予定だったのを直前にキャンセルした事情もあるから、夏の行き先としては最近には珍しくすんなりと決まった。ただその分緊張感に欠けて、準備はかなりダレた。

窓が閉まらなかったり鍵が開かなかったりする15年物の四駆を確保し、走り出してまず気付いたのは木が立派なことだ。穴だらけの道の両側に、あるいは村の中心に、見上げるような巨樹が屹立していて、いい具合に木陰を作っている。当然鳥も多い。

そして、その鳥や動物が逃げない。同じ仏教圏でも、人間の姿を認めるやテレポートするように身を隠すタイの里の鳥と違い、スリランカの鳥はのんびりしているのがすぐわかる。そもそも、米屋の店先で売り物の米に雀が群がっていて、店の親父も客もそれを当然のこととして許容しているのだ。これは面白いところに来た、と思わず頬が緩む。そしてこちらがニッコリすると、あちこちからニッコリが返ってくる。

人々の暮らしものんびりしていて、シンプルだ。金はないが、食べ物だとか、家族だとか、住むところだとか、自然だとか、大事なものは過剰なくらい揃っている。過剰過ぎて、強い陽射しと降雨が一度に来たりする。一度町で昼間の計画停電に遭遇したが、電気がなくともほとんど誰も困っていない。冷房なんかないし、飲み物も冷やさないし。暑ければちゃんと保冷庫を備えた自転車や車で、アイス売りも来る。貧しいが、豊かな国なのだ。

外からは放射性物質、なかからは同調圧力、要らないもの、気持ち悪いものならなんでも過剰にある日本のような国から来ると、この国は染みる。どんどん染みてくる。嫌になるほど染みる。昼間は天国のように楽しかったが、夜は何度も悪夢を見た。


[撮影 : 2011/08 スリランカ東南部] [photo data : 08/2011 - near Buduruwagala, Sri Lanka]
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