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[這いずり日記] 隠岐・島後 2009/春

豚インフルエンザ騒ぎの中、大阪〜広島〜山口にかけて用事があったので、そのまま暫時西日本に居残ることにした。山陰か隠岐か、頭の中では当初二つの選択肢があった筈なのだが、気がつくと、無意識が勝手に山陰の選択肢を消していた。というわけで、隠岐諸島のうち、一番大きくて丸い島後に出かけ、五日ほどとどまった。
島は好きだから時々出かけるが、日本海の島というと、思い出すのはどうしても十三年前の対馬だ。最高峰の御嶽に登ったのはいいが、登山道は地元で「大口」と呼ばれる毒蛇が占拠して守っており、それでもできるだけ避けて登っていたのに、頂上直下で道を横断して暖をとっていた一匹に、とうとう業を煮やして枯れ枝を投げつけてしまった。すると驚いたことに、一天俄にかき曇り、いや本当に空気が一変し、冗談ではなく空が暗く、そして森の中は真っ暗になってしまい、僕たちは顔面蒼白になって山を下ったのだった。そしてその翌日、僕は浜でリップカレントに流されて死に損ない、人生最大のピンチを迎えることになる。

だから、隠岐に行くに当たっての、僕の内心の最大の関心事は、実は渡り鳥がいるとかいないとかそんなことではなくて、島に暖かく迎えてもらえるか、その一点にあった、と言えば格好いいが、ようするに相当怖かったのである。で、実際どうだったか、と言えば、前半はやはり何だか変だった。雰囲気がよそよそしく、僕は嫌な予感につきまとわれてオドオドし、意気消沈し続けた。ただ、三日目に、大満寺の林道で借りていた自動車がお地蔵さんの前の溝に脱輪し、途方に暮れつつ何とか自立脱出できたあたりから、何となく、赦されつつあるような気持ちが体の中に生まれてきた。不思議なもので、そうすると何だか鳥も目に入ってくる。最終日、草の中の道を抜けて明るい浜に出ると、営巣中のハヤブサがくるくると頭の上を飛んでいた。まぶしい光の中でしばらく親鳥の飛翔を眺めていると、なんだか心からほっとしてくるのだった。


[題名: 墓に至る道 (title : Path Leading to Cemetery)] [photo data : 05/2009 - dogo island (oki islands), Japan]
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