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[這いずり日記] 米国アリゾナ州南東部 2008/晩夏

昨夏のガボンが今一つしっくりこなかったこともあって、今夏は基本に立ち戻り、自分で調べ、計画し、運転し、歩く、という形にこだわりたかった。ということでアメリカの隅っこ・アリゾナ州の南東辺縁部である。乾燥した平原ににょきにょきと岩峰が立ち並び、生態系的にはメキシコからの渡り鳥と、南北アメリカを行き来する鳥と、あと山の鳥、砂漠の鳥が出会うという、ちょっと妙な場所なのだが、この妙な場所は砂漠で熱せられた熱い空気と、太平洋からの湿った空気が出あう場所でもあって、七月八月はカミナリが凄いのであった。
山道を歩くと、あまりにも頻繁に黒焦げの樹木に出くわす。雲が湧くと同時にゴロゴロの音が聞こえてくる。落雷の頻度が単に多いだけでなく、平原で見通しが良過ぎるために、稲妻があまりにもあからさまに目に入ってくるのも精神的につらいものがある。カミナリが町に来ている時(ちょくちょく来ているのだが)山から町を見下ろすと、稲妻というより町が UFO の総攻撃を食らっているような非現実的な眺望が展開している。山から駆け降りたり、小屋で小さくなったりしながらも、少しずつ慣れてきて、また、後半、多少は穏やかな地域に移動したこともあって、ゴロゴロが聞こえた時、これは危急を要するゴロゴロか、多少なりとも猶予があるゴロゴロか、ある程度は判断がつくようになってきた頃、三週間の旅は終わった。

この他にも、草むらでガラガラヘビチャージされたり、それはそれなりにリスクはあったのだけど、やはり、恐怖がかすかな通低音のように流れる旅はよいと改めて思った。


[photo data : 09/2008, Portal, AZ, USA]
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