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シロスジキノコヨトウ - Stenoloba jankowskii - a Noctuid Moth (a Beauty)

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あまり人聞きが良くないから大声では言わないが、今の僕の山の夏の夜の愉しみは、何と言っても蛾の鱗粉観察だ。


灯に集まったおびただしい数の蛾をひとつ、ひとつ確かめていくと、凡庸な容姿のものに混ざって、虚を突かれるような、あるいは圧倒されるような、形容しがたいものに出会うことがある。この蛾もそうだ。一見、やや小振りの、抹茶金時みたいな渋い蛾だが、近づいて、拡大して見ると、胸の背側、人間で言ううなじというか首筋のあたりに、岩峰のように屹立する鱗粉の束があるのがわかる。明るい茶色が混ざっている。そして白いところに光をあてると、貝殻のような水色の反射が、ためらいがちにキラキラと返ってくる。思わず陶然とする。

虫の最盛期だから、
カブトムシコガネムシは遠慮なしにぶんぶんぶつかってくるし、蛾やほかの虫も、わんわんと飛び盛り、顔に止まり、袖口に入り込み、死体は転がり、鱗粉は巻き上がり、端から見るときっとすごいことになっていると思うが、撮影者の心中は、深海の底、光や音のない世界で、未知の生物と一対一で対峙する探検者の気分である。

でも人聞きが良くないから、実際に対面する人には、カメラで撮影するのは鳥と蝶ですよということにしている。夏なのに完全防備をして、這いつくばって蛾に迫り、息を止めてシャッターを押している間、ほとんど祈りを捧げているような心境です、などとは決して言わない。

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↓止まっているところを背後から。岩塔が立っているのがわかる。
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岩塔のぎりぎりアップ。写真としては色々な意味で限界。
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[写真撮影 : 2016/07 - 長野県 - 推定開張約30mm - 個人的博物館本館の「ヤガ・ヒトリガ・ドクガ・シャチホコガなどのなかま」のページへ]
[photo data : 06/2016 - Nagano, Japan - Noctuidae-Bryophilinae - estimated wingspan abt. 30mm - visit the main museum (“
Noctuid Moths, Prominent Moths, Tiger Moths & relatives”)]
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